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2008/10/10

甲田光雄医師について、書き残したいこと その1

甲田医院院長の甲田光雄医師が2008年8月12日に亡くなりました。
甲田医師は1924年8月2日生まれ。
私はこの10年くらいの間に仕事で5~6回ほど甲田医師に会いました。
甲田医師は「関西人のおじいちゃん」で、私の話をあまり聞かずにしゃべりたいことを一方的にしゃべるだけだったし、カメラを向けると張り切って180度開脚して若さをアピールするなど、ある意味、お茶目な人でした。
しかし、会った時間がほんのわずかでも、恐ろしく印象深く、甲田医師の言葉を私のできる範囲で残しておきたいという思いがあります。

大飯食らいだった
「断食博士」

甲田医師は、何万人もの人々に断食や少食を指導してきました。
そして、難病がみごとに治ってくるという症例が、続々と出てきました。

健康になりたいと思って、断食や少食を実践すれば、なんとか生き抜こうとするエネルギーが、体の中からわき上がってきます。
そして、体が軽くなり、どんどん元気になってきます。
甲田医師によると、これが自然の法則なのだそうです。

甲田医師自身が、最初に断食を行ったのは1950年のことです。
ここ数年は、以下のような少食生活を送っていました。
朝3時 起床
昼12時 青汁を飲み、生の玄米をすりつぶした生玄米粉と豆腐を食べる
夜6時 青汁とニンジンジュースを飲み、生玄米粉、豆腐、ゴマ、海藻類を食べる
※午前中は、水と柿の葉茶をたくさん飲み、食べ物はいっさい取らない
甲田医師は、食べない楽しみを味わいながら、毎日、気持ちよく生活したといいます。
ただ、甲田医師自身、生来の大飯食らいで、甘い物好きだったそうです。
「まんじゅうでも大福でも、1つなら食べないほうがましで、3つも4つも食べないと満足できなかった」と話していました。

甲田医師が少食を続けるようになったきっかけは、慢性肝炎を断食で治したことでした。
中学のときに、食べすぎのために慢性の胃腸病にかかって、2年間学校を休みました。
その後、復学したのですが、肝炎を患い、慢性化してしまいました。
健康になりたい一心で医師を志し、大阪大学医学部に進みました。
ところが慢性肝炎は治らず、大学3年のとき、十二指腸潰瘍、大腸炎、胆嚢胆道炎まで患って、大阪大学附属病院に入院することになりました。
当時の最先端治療を受けても、病状はいっこうによくなりません。
そして、主治医にこう言われたのです。
「甲田君。いつまでもこんなとこで治療を受けるよりは、家に帰ってのんびり養生したらどうや」。

甲田医師は、現代医学でだめなら民間療法で治らないかと、いろいろな本を読みあさりました。
そして知ったのが、断食療法です。
試してみたいと思って主治医に相談したら、「断食したら死んでしまう」と、ものすごくしかられました。

覚悟を決めて、生駒(奈良県)の山に登り、11日間の断食をやりました。
断食で甲田医師の体は回復していったのです。
繰り返し行えば、病気は治るかもしれないと、甲田医師は希望を持ちました。
そして、断食には、現代医学でまだ解明されていない深い真理が秘められていることを、体で感じ取ったのです。

それからは、大学で現代医学を学びながら、何度も断食を行い、少食にも取り組むようになりました。
どうして食を断つことでこんなに元気になるのか、医学的に解明しようと、甲田医師は考えていました。

ただ、最初から少食を実行できたわけではありません。
食事をへらすと、体が回復していくのがよくわかりました。
ところが、しばらく続けると、甘い物が食べたくて、たまらなくなるのです。
食べるとてきめん、体がだるくなります。
「これはいかんと、もう今日から甘い物は食べないことにすると決心するのですが、1カ月もたたないうちに、あんころもちを3つも4つも食べてしまう。そんな失敗ばかりです」

医者をやめて死んでしまおうと思い詰めたこともあったそうです。
そんなときでも、「待てよ。どうせ死ぬのやったら、その前に腹いっぱいぜんざいを食べておこう」と思う始末です。

甲田医師自身がさんざん苦労して、「少食にしなければならない」と自分を縛るのではなく、「少食になりたい」という思いを強くすることがたいせつだと気づきました。

やがて、食べ物への執着が消え、1枚の葉っぱ、1粒の米も、感謝して食べなくてはならないと、実感としてわかるようになったそうです。

心と体を蝕む
「宿便」

私たちは、「今まで健康だったのが一変して病気になった」と思いがちです。
ただ、甲田医師によると、病気は突然かかるものではありません。
「宿便」をためる生活を続けて、その結果として病気になるのです。

宿便がたまってくると、心と体の症状が現れます。
○いつも疲れた感じがして、手足が冷たい
○頭がスッキリせず、体のあちこちにしょっちゅう湿疹ができる
○取り越し苦労が多く、余裕がない

宿便とは、腸管内に滞った物の総称です。

胃腸の消化能力を超えて食べ物を取ると、食べ物の一部がうまく消化されず、腸管内に残ってしまいます。
これが宿便です。
人間の体は、口から肛門まで、消化管という管が1本通っています。
いつも大量の食べ物を摂取していると、消化管の途中で詰まりが生じてしまいます。
車の量がふえすぎると、道路が渋滞することと同じです。

腸管が長く伸びたり、横に膨らんだりして、宿便を収容します。
そして腸内細菌の出す酵素(化学変化を促す物質)が、宿便を分解するのですが、食べすぎが続くと分解が追いつきません。
やがて腸管が垂れ下がって、腸管どうしや、腸管とほかの組織などが癒着し、腸管の動きが鈍くなるのです。
これを甲田医師は「腸マヒ」と呼んでいます。

腸マヒがあると、腸管を内容物が通過できなくなり、宿便がさらにたまってくるわけです。
また、宿便が分解される中で発生した有害な毒素が、体内へ吸収されてしまいます。
そして、毒素が血液の中へ入り、体じゅうの臓器へと運ばれます。
結果、全身の倦怠感やアレルギー症状、肩こり、頭痛、肌荒れ、ひどい口臭など、いろいろな不快症状が出てきます。
「宿便は万病のもと」といっても過言ではありません。

道路の渋滞を解消するために、車両の通行を制限します。
これと同様に、宿便の解消には、食べ物が消化管に入ってくるのを止める、あるいはへらすのが効果的です。
断食で宿便が出るのは、モチリンという消化管ホルモンが、空腹時にたくさん分泌されるためです。
モチリンは「腸管の掃除屋」で、腸管の運動を活発にして、腸の内容物を下部に移送し、早く体外に排せつさせます。

宿便が出ると、症状は劇的に好転してきます。
甲田医師は、難病の患者さんがどんどん治っていく姿を見ながら、現代医学ではまだわからない真理がある、断食療法は間違っていないと確信しました。

犬や猫などの動物は、体の調子が悪くなると、日ごろの好物でも食べなくなります。
これは食べ物を断って自然治癒力を高め、体調を回復させる大自然の計らいに従っているわけです。

人間も、体調をくずして高熱が出ると、通常は食欲が落ちてくるものです。
ところが、食べないと栄養不良になり、弱ってしまうと考えます。
食欲がないのに無理して食べるから、ますます体がだるくなって、治る病気も治らないのです。

食欲のないときは、大自然の計らいにすなおに従って食べない。
また、食欲があっても、積極的に食をへらす。
すると、自然治癒力が高まり、体が疲れなくなって活力がわき、頭がさえて、なんともいえないくらい気持ちのいい生活を送ることができるのだそうです、
「少食に病なし」と甲田医師は話しました。


追記

甲田医師が考案した「半日断食」のやり方を簡単に紹介しています。

甲田光雄医師について書き残しておきたいこと 半日断食

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