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親子・兄弟姉妹の「困った人」とつきあうには

周囲に「困った人」はいませんか?
他人であれば相手と距離を置けば済むのですが、親子・兄弟など身近な関係だと簡単には離れられません。
身近な関係の「困った人」に対し、どのような態度を取ればいいのか、ここで考えてみたいと思います。

まず、以下の基準(DSM-Ⅳを改変)に当てはまるかどうか、相手の行動を観察します。

○基準 その1
1:毎日同じような生活を送り、交友関係が狭く、考え方が偏っている。
2:1の理由から、日々の生活の中で苦痛が生じている。
3:その苦痛が、長い期間にわたって継続している。
4:苦痛は、薬物などが原因ではない。

○基準 その2
1:現実または妄想の中で、「見捨てられるのではないか」と強い不安を抱いている。
2:人の好き嫌いが激しく、交友関係が安定していない。
3:気分がめまぐるしく変わり、周囲を疲れさせる。
4:感情のブレーキが効きにくく、傷つきやすく、ちょっとしたことで激しく怒る。
5:衝動的な行動を繰り返し、周囲に動揺を与える。
6:自己を損なう行為(薬物乱用・アルコール依存・場当たり的なセックス・万引き・過食・買い物依存など)に夢中になる。
7:心にいつも空虚感を抱き、幸せを感じにくい。
8:生きることに対する違和感やつらさを感ている。
9:強いストレスがかかったとき、一時的に記憶がなくなることがある。

上記の基準に多く当てはまる人は「境界性パーソナリティ障害(以下、「振り子タイプ」)」。

振り子タイプは極端な言動をするので、周囲の人を振り回したり、人間関係を悪化させたりします。

振り子タイプに対し、「どうしてこんな極端な考え方・行動ばかりするのだろうか」、そして「なんとかして相手をいい方向へ変えることができないだろうか」と考えるケースが多々あります。
振り子タイプの行動は逸脱しているものの、精神状態はしっかりしていて、きちんと言葉が通じるので、「なんとかできるのではないか」と思えるのです。
そして、振り子タイプの逸脱した行動をやめさせて、周囲との軋轢を生まない行動・思考をするように期待したり、強制しようとしたりするのです。

ところが、「相手を変えよう」という思いを抱くことは、状況を悪化させるばかりです
最大の問題点は、自分と、振り子タイプの相手とを同一視していること。
他人なのに、自分のように変えられると勘違いしているわけです。

相手を変えようすることは、すなわち、相手を否定して、自分が正しいと思っている価値観を相手に押しつけることです。
そのため、相手は反発し、よかれと思って相手を変えようとすればするほど、さまざまな争いが発生します。
結果的に、精神的な消耗を味わうことになるのです。

状況を改善するのは、振り子タイプ自身が、「私の考え方や行動は極端である」と気づき、辛抱強く思考・行動を変えようとするかどうかにあります。
厄介なことに、振り子タイプは「回復したい」「よくなりたい」「克服したい」などと思うことはなく、自身の苦痛を周りの人にわかってもらいたい欲求が強いので、無意識に「自分は悪くない」と思う傾向が強いです。

ですから、振り子タイプとつきあっていかなければならない場合は、自分とは違うタイプの人間であると認識し、「しかたがない」と割り切ること。
当の本人の自己認識でしか変われないのですから、相手を変えようするのはやめて、無駄な争いを回避するのが、精神的な消耗を防ぐために最もたいせつです。

そして、相手の思考パターンを分析します。
相手が言うことは本人の主観、つまり偏った、極端な見方であり、客観的な事実とはまったく異なります。
とはいえ、相手の思考パターンを否定せず、客観的な事実との違いを確認しましょう。

そのために、いつ、なにがきっかけで、どのような言動が見られたかを記す観察記録が有効です。
すると、相手の衝動的な言動に、思考パターンが見えてきます。
気持ちが大きく振れるパターンを分析することで、怒りの爆発を事前に回避したり、事前に予測したりすることができます。
特定の話題で衝動的になるとわかったら、その話題を避ければいいわけです。

振り子タイプによく見受けられるのが「見捨てられ不安」。
不安が強いからこそ、「私の気持ちを理解してくれない」など「×××をしてくれない」としきりに言うのは、当然の行動と言えるでしょう。

しかし、相手の要求にすべて応じるのは困難です。
要求に振り回されて、精神的に追い詰められる例も少なくありません。

ですから、自分は、ただ自分のやるべきことをやっていればいいのです。

そうすると、相手はわざと挑発的なことを仕掛けてきて、試そうとする可能性があります。
しかし、あくまでも冷静に自分の作業を続けることが、お互いにとってたいせつなのです。
そうすることで、自分が精神的にも追い詰められませんし、相手の挑発や要求もエスカレートしていかないからです。

最初に行っておきたいのは、「自分とは何者か」について、自分なりの答えを持つこと
そして、優先順位をつけることです。
例えば、自分は妻と子どもを持つ会社員である→子どもをいちばん尊重し仕事はその次、などです。
これがある程度確立されていれば、自分と相手との違いが明確になるので、相手の要求に対しても「できる」「できない」をはっきり示すことができます。

相手の要求にすべて応えるのは、愛情ではありません。
極端な行動を取る人は、要求が1つ受け入れられると、次はさらに上回る要求を突きつける傾向があります。
このように、要求がどんどんエスカレートしていって、最終的には要求が受け入れられないと、「私のことなんてどうでもいいんでしょ!!」と言って非難します。
相手にとって、言動がエスカレートすることは自身へのコントロールがどんどんできなくなっていくことなので、ほんとうは苦しいことなのですが、その自覚はありません。

相手の要求をエスカレートさせないため、できないことに「NO」と言うことは、長い目で見れば相手を苦しめないことにつながるのです

また、自分にとっての「NO」が明確になれば、自分の許容範囲、つまり「YES」も明確になり、相手の要求ペースに巻き込まれずに済みます。

たとえ相手が家族でも同様に、相手とは一線を引くこと。
自分は自分でいい、相手は相手でいい、それがお互いにとってプラスに働くと意識したうえで、相手をよく観察しながら生活をしましょう。

最後に、私たちは誰もが振り子タイプになる可能性を持っています。
また、さまざまなストレスが原因で、一時的に振り子タイプに陥ることもあります。
特に振り子タイプになりやすいのは、老人です。
原因の一つは、脳機能の衰え。
さらに、仕事や育児などを引退して、生活が単調になりやすく、同時に、社会の中で無力感を味わうことが多いからです。

では、老いた親が振り子タイプになったときを考えてみましょう。
いちばん避けたほうがいいのが、「他人に困った老親のことを相談する」「愚痴を言う」ことです。
老親に振り回されて精神的に追い詰められているのに、「子どもなんだから、それくらい我慢しなさいよ」「親御さんが亡くなった後で、後悔するよ」などといった、子どもの側に非があるという対応をされる可能性が非常に高いからです。
すでに追い詰められているのに、さらに苦しい状況に自分を追い込むことになります。

家族に振り子タイプがいてつらい・腹立たしい・苦しいという気持ちは、同じ状況を味わった人でなければわかりません。
現在の日本では、老親の愚痴を言うこと自体、親不孝のニュアンスで受け止められがちです。
自分を苦しくしないためにも、他人には相談しないほうが賢明でしょう。

実際、振り子タイプの親が亡くなった後で、後悔するどころか、「やっと解放された」とほっと安心した私です。
この感情は、振り子タイプの親を持つ人間にしかわからないでしょうね。

私も大変でしたが、インターネットを調べると、どうやら、同様に困っている人はかなり多いようです。
私やあなただけではありません。
どうか、自分を悲しく思わないで。

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